実録!ハラッサーとの対決①ハラスメントの嵐!驚きの職場環境

ここからは、ハラスメント被害に遭い、加害者と闘った事例をご紹介します。事例と言っても、内容の本質を生かしながらも、登場する個人や企業名を特定できないよう改変してあります。いくつものハラスメント被害のエッセンスを抽出して普遍性を持たせた物語として読んで頂ければと思います。

はじめまして。私はユキといいます。29歳の女性です。25歳で転職して入社した建設系の会社で事務をしていました。この会社でハラスメントを受け、加害者と闘い、今では平穏な生活に戻ることができました。今回は私のそんな体験が誰かの参考になればと思い、お話させていただきます。

この会社は小さいところで、スタッフはパートの人も含めて全部で20人弱でした。社員の中には社長の妻や親戚もいて、家族経営の色が濃い環境でした。みんなが家族みたいな雰囲気がいいなと最初は思っていました。

社長は江戸っ子タイプというか、何でもズバズバと言ってしまう性格なのですが、時々みんなの前で「ユキは彼氏と最近どうなんだ?」とか「初体験は何歳だった?」など、恥ずかしい話題を平気で振ってくるようになりました。そんな時はいつもどう答えていいのか分からず、口ごもるばかりでした。社長のそういう言葉を聞いても、他の社員はみんな笑っているだけでした。内心嫌だなと思っていましたが、この時点ではまだ受け流せる程度でした。

でもだんだんエスカレートしてきて、給湯室や倉庫などで偶然二人きりになったときに「彼氏と別れたら俺に言えよ。慰めてやるから」など思わずゾッとするようなことを言ったり、ある時は「ユキの髪はきれいだな」と言いながら髪に触れてきました。この時は思わず「やめてください!」と手を振り払ってしまいました。すると社長は無言で立ち去り、その日からしばらくとても冷たい態度を取られました。

小さな会社なので、私のような平社員でも社長に電話を取り次いだり、仕事上直接話さなければならないことも度々ある中で、私にだけ冷たい態度を取られるのはとても辛かったです。どうしたらよいのか分からず、女性の先輩に相談してみることにしました。その先輩は、普段から「困ったことがあったら何でも言ってね」と言ってくれていたので、助けてほしいという一心で、これまでのセクハラを内心嫌だと思ってきたことや二人きりの時に髪を触られたことを話をしてみました。

すると先輩は「あ~、あの社長はそういう人なのよね。今まで何人も若い女の子がそれが理由で辞めちゃったんだけど…。でも、それくらいは我慢しないとね。私たちは社長にお給料もらってるんだから、社長の機嫌を取るのも仕事のうちじゃない?」と言いました。今思えば、これは二次被害なのですが、その当時は私の我慢が足りないんだ…という自責の念と、助けてもらえないんだなという絶望感で胸がいっぱいでした。

しばらくすると、社長の機嫌も治り、再び性的な言葉を言われるようになりました。さらに、髪だけでなく身体にも触られるようになってしまったのですが、拒否してまたあの時のように私一人だけ無視されたりするのは避けたかったので、やんわり身体を避けるなどするのが精一杯でした。

この頃からあまり眠れなくなり、眠れたとしても社長が出てくる悪夢を見るなど、睡眠がゆっくりとれず、身体が重い日が続くようになりました。また、朝になると「また今日も触られるのかな」と頭が自動的に考えるようになり、会社に行きたくないと思うようになっていました。それでも、この時点では転職してまだ1年と少しだし、仕事自体は好きだったので、重い身体を引きずるようにして出勤していました。②に続きます。

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相談先を検討しよう!あなたに合った相談窓口がきっとあります

ハラスメントに苦しみ、もうこれ以上耐えられないと思ったら、相談機関に頼ることを考えましょう。被害者の置かれている状況やハラスメントの種類などによって、適する相談窓口が変わってくることもあります。どこへ相談に行けばいいのか分からない人はぜひこの記事を参考にしてみてください。

まず、ハラスメントを受けている場所の中に相談所がないか調べてみましょう。中学校や高校には養護教諭やスクールカウンセラーがいます。相談できそうな相手ならぜひ利用してみてください。また、多くの大学にはハラスメント相談所が設置されていますし、大きめの会社なら相談室や企業内カウンセラーがあるところも増えています。学内や社内だと相談に行った情報が漏れそうで不安という方もいると思いますが、相談所のスタッフは学外・社外の人だけの第三者機関であるところもあるので、心配なら一度確認してみてもよいと思います。

相談に行ったからといって、すぐに加害者に何か連絡があることはありませんし、まずはよく話を聞いてもらえると思います。不安なことは何でも問い合わせましょう。

心身に困った症状が出ているなら病院を受診することも視野に入れましょう。頭痛や腹痛などの身体症状ならまず内科でもかまいませんが、ハラスメントが原因のストレス反応として身体症状が出ていると思われる場合は、心療内科や精神科の方が早いかもしれません。

うつ状態やパニック発作、対人恐怖などの心理的症状がある場合は、やはり心療内科や精神科でもよいですが、病院ではなくカウンセラーのいる相談室もおすすめです。ハラスメント被害ということについて理解が深いところが多いです。

ハラスメント被害はトラウマになり得る重篤な被害なので、PTSDなどの症状が出ることも少なくありません。PTSDの治療も行える相談室もありますので、興味のある方はインターネットなどで探してみることをおすすめします。

社会人の方のセクハラやパワハラの相談、ハラスメントにまつわる退職や解雇の相談は、法テラスや労働基準監督署、労働局などでも専門的に請け負ってくれます。

法テラスは、すべての都道府県にあり、様々な法律にかかわる相談を無料で受けてくれる心強い機関です。特にセクハラやパワハラについての相談にも力を入れているので、ぜひ検討してみてください。電話での相談も受けているので、比較的気軽に利用できそうです。

ブラック企業やパワハラ・セクハラ、解雇に関する相談は、労働基準監督署の専門です。法的に問題があるかどうか相談に乗ってくれますし、被害者の希望に応じて会社に改善指導を入れてくれることもあります。

また、労働局では「あっせん」という和解を目的とした労働紛争解決のための事業があり、ハラスメントの加害者と被害者の間に立って、和解に向けた話し合いの場を設けてくれます。無料なので、訴訟などの手前の段階で利用するのもひとつの手です。

自分に合った相談窓口が見えてきたでしょうか。よく分からないという人は、まずは一番身近なところへ行くか電話をするかしてみて、そこで「どこへ相談に行けばよいか」「そもそも、これはハラスメントなのか」など、どんなことでも遠慮なく聞いてみると良いと思います。ハラスメント被害に苦しむ人が少しでもその重荷を降ろせるよう、一歩を踏み出してみませんか。

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もしかしたらハラスメントより辛いかもしれない二次被害

ハラスメント被害そのものが被害者を大きく傷つける深刻なものであることはもちろんですが、意外に知られていないのがハラスメントの二次被害の実態です。この二次被害が、とても厄介なものなのです。被害者の中には、ハラスメントよりも二次被害の方がずっと辛かったという人も少なくありません。

ハラスメント被害によってもたらされた直接的なもの、たとえば暴言や暴力などによって得た傷つきが一次被害です。そして、ハラスメントの一次被害によって学校や職場を辞めざるを得なくなったりと、ハラスメント被害そのものではない損害が出ることをハラスメントの二次被害といいます。

ハラスメントの二次被害の中でもっとも深刻なものが、人間関係にひびが入るというものです。職を失ったり、経済的な損害が出るのももちろん大変なことですが、人間関係の二次被害は、経験したことのない人が想像するよりもずっと辛いものです。

具体的には、ハラスメント被害に遭った人がそのことを誰かに相談して、逆に責められてしまうというものが圧倒的に多いです。二次被害になり得る言葉には、以下のようなものがあります。

「それくらい我慢しなよ」「そんなことでいちいち悩むなんて心が弱いせいだから、もっと強くならないと」「それくらい受け流せるようにならないとだめだよ」というような、被害者の弱さを責めるものです。親など目上の人に相談したときに受けやすい二次被害の言葉です。

「誰にだってそれくらいのことはあるよ」「あなたのためを思って厳しく指導してくれてるんだよ」というような、アドバイス系も多いです。おそらく被害者を慰めるつもりで言っているのでしょうが、実際言われた方は「やはり私の我慢が足りないいんだ…」と考え、ますます被害の度合いが深刻化してしまいかねない言葉です。

もっと直接的に被害者を責めるものも、意外なほど多いです。「あなたにも原因があったんじゃないの?」「隙があるからセクハラされるんだよ」「何をしてそんなに怒らせたの?」などがその代表的なものですが、これを言われると、被害者は泣きたいほど傷つきます。

また、中立に立たなければと思うあまり、「直接現場を見てないからどっちが悪いか分からない」「人間同士のことだから、片方だけが悪いということはないと思う」というように、被害者にも非があると言外に伝えてしまう言葉も多く聞かれます。

ハラスメント被害者は、誰彼構わず被害について言いふらすようなことはまずしません。我慢に我慢を重ねてようやく、信頼できる相手を選んで相談します。それなのに自分が責められるようなことを言われてしまうと、非常に深く傷ついてしまうのです。被害を受けている時点で「自分が悪いからこんな目に遭うんだ」とすでに自分を責めている被害者が多いわけですが、さらに信頼している人からも責められると、余計に自分を責めることになり、立ち直れないほどのショックを受けます。

そうなると、再び傷つくことを恐れるあまり、その相手に会うことができなくなってしまいます。こうして、友達や恋人を失うというケースも多いです。

多くの被害者が誰かにその被害を相談するとき、どっちが悪いと判定してほしいわけではありません。ただ辛い気持ちを聞いてほしい、誰かに吐き出したいという思いからであることが多いです。「つらい環境でよく頑張ってきたね」と言ってあげるだけで、ずいぶん慰められるものです。何かアドバイスしなければと思ってしまうと、二次被害に当たることを言ってしまいかねないので、余計なことを言うくらいなら黙って聞いてあげる方がよほど優しい対応です。

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心も身体も人間関係も…ハラスメント被害によるいろいろな影響

ハラスメント被害に遭うということは、長期に渡って継続的に自尊心を傷つけられるということです。なので、まず心が傷ついていき、自分自身が価値のない存在になったように感じられるようになります。漠然としていて分かりにくいかと思いますが、人は誰でもなんとなく自分に価値があるという感覚をベースに持っているからこそ、嫌なことが時々あっても乗り越えて生きていけるのです。

しかし、このベースをハラスメント被害によって崩されてしまうと、ちょっとしたことでも「やっぱり私はダメなんだ」「ひどいことを言われるのも、私が悪いんだから仕方ない」「私なんてゴミみたいな存在だから、死んだらみんな喜んでくれるかも」というところまで、思考が行ってしまいます。決して大げさではなく、本当に誰でも被害に遭い続ければこういう状態になり得ます。

その結果、精神的に追い詰められ、眠れない、食事がとれない、何をしても楽しいと思えないなど、いわゆるうつ状態になったり、パニック障害、対人恐怖などの症状が出てきてしまうこともよくあります。また、自傷行為、自殺未遂など深刻な問題にも発展しかねません。

こうなってしまうと、加害者の顔を見るだけでも恐怖ですから、加害者がいる学校や職場を離れざるを得ません。不登校や休学・退学、退職を余儀なくされる被害者も少なくありません。生活のベースを失ってしまうというだけでなく、学校の場合は入学金や授業料なども納めているでしょうし、職場の場合は休職でもお給料は減額され、退職ならもちろん全額もらえなくなりますから、金銭的にも損害が出ます。学校を卒業や修了できないということは、就職や将来にも響きます。傷ついた心身を治療するための通院費もかかってしまいます。

もちろん、ここまで影響が大きく出てしまう前に、頭痛、腹痛、めまい、発熱、身体が重い、朝起きづらいなどなど、様々な種類の身体的症状が出ることが多いです。自分自身、ハラスメント被害によってそれほど傷ついているという自覚がなく、先に身体の方に症状が出るというケースもとても多いです。そして、病院に行っても原因が分からず、心理的なアプローチを受けて初めて、ハラスメントでこんなに深く傷ついていたんだと気づくこともあります。

これだけでもすでに大きな影響が出てしまっていますが、ハラスメント被害者にとってもっとも大きく辛い影響は、人間関係が壊れてしまうことです。

詳しくは二次被害についての記事で書きますが、ハラスメント被害を誰かに相談すると、「あなたにも原因があったんじゃないの?」というような反応が返ってきて、ますます傷つくということがとてもよくあります。友達だと思っていた人や、味方だと思っていた家族から、このような思わぬ反応をされて、さらに深く傷ついた被害者は、これ以上傷つくのが怖くてもうその友達に会うことができなくなってしまうこともあります。こうして、友達を失ってしまうケースは珍しくありません。

自尊心、心身の健康、お金、仕事や将来、友達…これらを全部なくしてしまうことにもなりかねないハラスメント被害。たとえ加害者に悪気がなかったとしても、許されるものではありません。

ただ、疲弊しきっている被害者の方も、失うものばかりではありません。ひときわ辛い思いをしたあなたは、他人の痛みが分かるので、誰かにハラスメントしたり、二次被害をもたらすことは決してしないはずです。被害から立ち直った人の中には、被害に遭う前よりも今の自分の方が好きと言う人もいます。被害に遭わないのが一番なのは言うまでもないですが、これは、ハラスメント被害唯一の良い影響かもしれません。

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