家庭にもハラスメントは存在する!モラル・ハラスメントの実態

ハラスメントは一般的に職場や学校の中で起きることが多いですが、家庭の中にも存在します。それはモラル・ハラスメントと呼ばれるものです。

モラル・ハラスメント(以下モラハラ)とは、一体どんなものでしょうか。セクハラなどと違って、ちょっと漠然としていて分かりにくい概念ですね。モラハラは外側からは分かりにくい種類の精神的ないじめなので、実際に被害に遭うか、身近に当事者がいないと分からないのも無理はありません。

モラハラは既存の言葉でわかりやすく表現するならば、精神的なDV(ドメスティック・バイオレンス)と同じようなものです。身体的な暴力は伴わないことが多いのですが、精神的に暴力をふるい、相手の尊厳を奪い、コントロールするものです。

ハラスメントは上下関係のもとに起こると説明してきました。家庭の中の上下関係とは、どんなものでしょうか。親子には上下関係がありますが、親子間のモラハラはどちらかと言えば精神的虐待として認識されているので、ここでは触れないことにします。一般的に家庭内のモラハラとして問題になるのは、夫婦間のものです。

夫婦は本来平等な関係のはずですが、モラハラ加害者は自分が配偶者よりも優位に立とうとします。時間をかけて少しずつ相手を弱い立場に追いやり、精神的に支配します。

具体的には、このような言動がモラハラとなります。たとえば、妻が休日の朝に夫を起こそうとして、「休みなんだからゆっくり寝かせろ!」と怒らせてしまったとします。妻はそれもそうだと思い、次の休みには起こさずにゆっくり寝かせました。昼近くになって起きてきた夫は妻に「なぜ起こさなかったんだ!お前のせいでせっかくの休みを無駄に過ごすことになっただろう!」と怒ります。

何かにつけて、このような調子で理由がよく分からないままに怒られたり、機嫌を損ねられたり、無視されたりするので、妻は夫に恐怖心を抱くようになります。このような状態が続くと、妻はどうしたらよいか分からなくなり、次第に夫を怒らせないように顔色をうかがって、ビクビクして過ごさなければならなくなります。これがモラハラ被害です。

さらにモラハラ加害者は、自分をとても能力のある人間だと思っていることが多く(根拠がないことが多いのですが)、いかに優れているかを被害者に伝え続けます。すでに恐怖心を植え付けられ、洗脳されている被害者は、やはりこの人はすごいんだ、怒られるのは私が劣っているから仕方ないのだと自分を責めます。

モラハラ加害者は、被害者以外には良い人だったりもするので、周りからは「いい旦那さんでうらやましい!」などと言われ、ますます他人には被害を話しにくくなります。これがモラハラ被害が表に見えにくくなる要因のひとつです。

モラハラ加害者は非常に嫉妬深いのも特徴です。自分以外の人といるときに楽しそうにしている被害者を見ると、「もうあいつと会うな」と言ったりします。こうして精神的にだけでなく、行動面でもコントロールしようとします。

モラハラ被害に遭っていると、しだいに心身ともに調子を崩すようになります。配偶者に恐怖を感じ、体調や心の調子が悪いという人は気づかぬうちにモラハラ被害者になっているのかもしれません。あまり無理はせず、早めにどこかに相談に行かれることをおすすめします。