心も身体も人間関係も…ハラスメント被害によるいろいろな影響

ハラスメント被害に遭うということは、長期に渡って継続的に自尊心を傷つけられるということです。なので、まず心が傷ついていき、自分自身が価値のない存在になったように感じられるようになります。漠然としていて分かりにくいかと思いますが、人は誰でもなんとなく自分に価値があるという感覚をベースに持っているからこそ、嫌なことが時々あっても乗り越えて生きていけるのです。

しかし、このベースをハラスメント被害によって崩されてしまうと、ちょっとしたことでも「やっぱり私はダメなんだ」「ひどいことを言われるのも、私が悪いんだから仕方ない」「私なんてゴミみたいな存在だから、死んだらみんな喜んでくれるかも」というところまで、思考が行ってしまいます。決して大げさではなく、本当に誰でも被害に遭い続ければこういう状態になり得ます。

その結果、精神的に追い詰められ、眠れない、食事がとれない、何をしても楽しいと思えないなど、いわゆるうつ状態になったり、パニック障害、対人恐怖などの症状が出てきてしまうこともよくあります。また、自傷行為、自殺未遂など深刻な問題にも発展しかねません。

こうなってしまうと、加害者の顔を見るだけでも恐怖ですから、加害者がいる学校や職場を離れざるを得ません。不登校や休学・退学、退職を余儀なくされる被害者も少なくありません。生活のベースを失ってしまうというだけでなく、学校の場合は入学金や授業料なども納めているでしょうし、職場の場合は休職でもお給料は減額され、退職ならもちろん全額もらえなくなりますから、金銭的にも損害が出ます。学校を卒業や修了できないということは、就職や将来にも響きます。傷ついた心身を治療するための通院費もかかってしまいます。

もちろん、ここまで影響が大きく出てしまう前に、頭痛、腹痛、めまい、発熱、身体が重い、朝起きづらいなどなど、様々な種類の身体的症状が出ることが多いです。自分自身、ハラスメント被害によってそれほど傷ついているという自覚がなく、先に身体の方に症状が出るというケースもとても多いです。そして、病院に行っても原因が分からず、心理的なアプローチを受けて初めて、ハラスメントでこんなに深く傷ついていたんだと気づくこともあります。

これだけでもすでに大きな影響が出てしまっていますが、ハラスメント被害者にとってもっとも大きく辛い影響は、人間関係が壊れてしまうことです。

詳しくは二次被害についての記事で書きますが、ハラスメント被害を誰かに相談すると、「あなたにも原因があったんじゃないの?」というような反応が返ってきて、ますます傷つくということがとてもよくあります。友達だと思っていた人や、味方だと思っていた家族から、このような思わぬ反応をされて、さらに深く傷ついた被害者は、これ以上傷つくのが怖くてもうその友達に会うことができなくなってしまうこともあります。こうして、友達を失ってしまうケースは珍しくありません。

自尊心、心身の健康、お金、仕事や将来、友達…これらを全部なくしてしまうことにもなりかねないハラスメント被害。たとえ加害者に悪気がなかったとしても、許されるものではありません。

ただ、疲弊しきっている被害者の方も、失うものばかりではありません。ひときわ辛い思いをしたあなたは、他人の痛みが分かるので、誰かにハラスメントしたり、二次被害をもたらすことは決してしないはずです。被害から立ち直った人の中には、被害に遭う前よりも今の自分の方が好きと言う人もいます。被害に遭わないのが一番なのは言うまでもないですが、これは、ハラスメント被害唯一の良い影響かもしれません。