もしかしたらハラスメントより辛いかもしれない二次被害

ハラスメント被害そのものが被害者を大きく傷つける深刻なものであることはもちろんですが、意外に知られていないのがハラスメントの二次被害の実態です。この二次被害が、とても厄介なものなのです。被害者の中には、ハラスメントよりも二次被害の方がずっと辛かったという人も少なくありません。

ハラスメント被害によってもたらされた直接的なもの、たとえば暴言や暴力などによって得た傷つきが一次被害です。そして、ハラスメントの一次被害によって学校や職場を辞めざるを得なくなったりと、ハラスメント被害そのものではない損害が出ることをハラスメントの二次被害といいます。

ハラスメントの二次被害の中でもっとも深刻なものが、人間関係にひびが入るというものです。職を失ったり、経済的な損害が出るのももちろん大変なことですが、人間関係の二次被害は、経験したことのない人が想像するよりもずっと辛いものです。

具体的には、ハラスメント被害に遭った人がそのことを誰かに相談して、逆に責められてしまうというものが圧倒的に多いです。二次被害になり得る言葉には、以下のようなものがあります。

「それくらい我慢しなよ」「そんなことでいちいち悩むなんて心が弱いせいだから、もっと強くならないと」「それくらい受け流せるようにならないとだめだよ」というような、被害者の弱さを責めるものです。親など目上の人に相談したときに受けやすい二次被害の言葉です。

「誰にだってそれくらいのことはあるよ」「あなたのためを思って厳しく指導してくれてるんだよ」というような、アドバイス系も多いです。おそらく被害者を慰めるつもりで言っているのでしょうが、実際言われた方は「やはり私の我慢が足りないいんだ…」と考え、ますます被害の度合いが深刻化してしまいかねない言葉です。

もっと直接的に被害者を責めるものも、意外なほど多いです。「あなたにも原因があったんじゃないの?」「隙があるからセクハラされるんだよ」「何をしてそんなに怒らせたの?」などがその代表的なものですが、これを言われると、被害者は泣きたいほど傷つきます。

また、中立に立たなければと思うあまり、「直接現場を見てないからどっちが悪いか分からない」「人間同士のことだから、片方だけが悪いということはないと思う」というように、被害者にも非があると言外に伝えてしまう言葉も多く聞かれます。

ハラスメント被害者は、誰彼構わず被害について言いふらすようなことはまずしません。我慢に我慢を重ねてようやく、信頼できる相手を選んで相談します。それなのに自分が責められるようなことを言われてしまうと、非常に深く傷ついてしまうのです。被害を受けている時点で「自分が悪いからこんな目に遭うんだ」とすでに自分を責めている被害者が多いわけですが、さらに信頼している人からも責められると、余計に自分を責めることになり、立ち直れないほどのショックを受けます。

そうなると、再び傷つくことを恐れるあまり、その相手に会うことができなくなってしまいます。こうして、友達や恋人を失うというケースも多いです。

多くの被害者が誰かにその被害を相談するとき、どっちが悪いと判定してほしいわけではありません。ただ辛い気持ちを聞いてほしい、誰かに吐き出したいという思いからであることが多いです。「つらい環境でよく頑張ってきたね」と言ってあげるだけで、ずいぶん慰められるものです。何かアドバイスしなければと思ってしまうと、二次被害に当たることを言ってしまいかねないので、余計なことを言うくらいなら黙って聞いてあげる方がよほど優しい対応です。