パワハラは一種の洗脳です。ブラック企業によくあるケース

ハラスメントの中でも、職場におけるパワー・ハラスメント(以下パワハラ)は、悪質なものだと本当にやっかいな問題にまで発展してしまいます。

現在は大きな会社だと社内研修でハラスメント防止の啓発がなされたり、相談室が設置されたりするところもあります。しかし、小さな会社や特にブラック企業と呼ばれるような職場では、残念なことにハラスメントが後を絶たず、中でもパワハラは大きな問題です。

小さな会社だと人数が少ない分、お互いにモニタリングしてハラスメントを予防するという組織的な動きがしにくいため、一人のハラスメント的暴走を止められないことにつながってしまいやすいのです。

特にブラック企業でのパワハラは、そうでない職場のパワハラよりも一段と問題が深刻化しやすい構造になっています。

ブラック企業では、残業代を支払わなかったり、時給換算すると最低賃金を下回っていたりと、少ない給料で働かせます。また、無期限雇用ではなく期限付きの契約更新型にして、会社にとって面倒になったらいつでもクビを切れるような不安定な身分で働かせています。

ブラック企業の社員は、なぜこのような法的にも問題のある雇用契約でも、文句も言わず働いてしまうのでしょうか。その根底に、パワハラが潜んでいることが意外にも多いのです。

パワハラ加害者は被害者に対して大声で怒鳴ったり、物を投げつけたり、到底終わらないような量の仕事を押し付けたり、逆に仕事を与えなかったりすることによって、肉体的に疲弊させ、さらに精神的に恐怖心を植え付けます。こうして、会社に対しておかしいと思うことがあったとしても、反発する体力や気力を奪います。

さらに、社員に対して「バカ」「死ね」「何をやらせてもダメだな」「お前なんかを雇ってあげるのは、この会社くらい」「ほかに行っても、どうせ使い物にならない」など、その能力や人格を徹底的におとしめます。これはまったく事実ではありません。それでも、このような罵声を浴びせられる環境にいると、人は「やっぱり自分はダメな人間なんだ」「ここでしか雇ってもらえないんだ」「生活もあるし、仕事がなくなると困るからここにかじりつくしかない」という考えに陥ってしまいます。

こうして、パワハラによってブラック企業から逃げられないように洗脳されてしまうのです。会社としては安い賃金で都合よく働かせ、被害者が過労やハラスメント被害によって心身を病んで出社できなくなれば、あっさり退職させて、また新しいターゲットを使い捨てにするというサイクルなのです。

被害者はパワハラと身体的な過労が重なっているうえに、パワハラによる洗脳で自尊心をズタズタにされていますから、休養だけでなくメンタル的な治療が必要になることも多いです。さらに再就職先を探そうにも、どこへ行っても使い物にならないと言われているので、本当にそうかもしれないと思い込まされ、二の足を踏むことになりがちです。こうして、社会復帰までに時間がかかってしまうことが多く、ブラック企業でのパワハラは、ただのハラスメントよりも悪質と言えるのです。

パワハラで受けた暴言はまったく事実ではありません。雇用条件に問題があるのでは?と思ったり、会社で言われていることが理不尽だと感じたら、疲労が大きくなったり洗脳されたりする前に相談窓口へ行くことを強くお勧めします。