実録!ハラッサーとの対決②寝耳に水のクビ騒動

①からの続きです。

私にはこの会社に入った時点では彼氏がいて、そのことは社長も知っていました。でも社長にセクハラをされていることは、彼氏にはどうしても言うことができませんでした。セクハラを知った彼氏が悲しい思いをするんじゃないかと不安だったのと、社長に文句を言ってやると言い出されたら…と怖かったからです。そして何より、先輩に相談して余計に傷ついた経験もあり、もし彼氏にも同じように私の我慢が足りないと言われてしまったら、生きていけないほどのショックを受けると感じていました。それが怖くて、どうしても話せませんでした。

そして、体調が悪くなるにつれ休日も寝て過ごすことが多くなり、彼氏と会う体力も気力もなくなってしまい、ついには別れることになりました。彼氏は心配もしてくれましたが、私となかなか会えなくなって寂しく、放っておかれているという不満も持っていたようでした。その申し訳なさからこちらから別れを切り出す頃には、すでに私から気持ちが離れていたように思います。別れたことで喪失感もありましたが、それよりも自分を保つことで精一杯でした。もちろん、社長には別れたことは内緒にしていました。

セクハラは相変わらず続きました。というより、どんどん酷くなっていきました。「この後二人だけで飲みに行こう」と言われたり、休日に電話がかかってきて「今から会おう」と誘われることもありました。社外で二人だけで会うなんてことをしたら、間違いなく襲われると思いました。「体調が悪いので…」と断っていましたが、断るたびに社長の機嫌が悪くなるので、それもすごくつらかったです。

朝になると、吐き気や頭痛もするようになりました。仕事は必死にやっているつもりでしたが、寝不足でぼうっとしてしまうせいでミスもありました。社長はセクハラをしたり誘ってくるときは、とても甘い猫なで声なのですが、私がミスをしたりすると一変して「このバカ!」などと怒鳴ることもありました。私は社長が怖かったです。

誘われるままに応じれば、社長は私を怒鳴ったり無視したりしなくなるのかな。その方がたぶん会社の雰囲気もよくなる。仕事もしやすくなるかもしれないなんて考えることもありました。でも、やはりどうしても社長と二人で会うのは嫌でした。今思うと、この選択は正しかったと思います。二人で会っていたら、やはりもっとひどい性的被害に及んだと思うからです。

その日は突然やってきました。ある朝起きようとすると、起き上がれなくなっていたのです。やっとのことで身体を起こし、出社する準備をしなければと考えたら、涙がどっと溢れてきました。止めようとしても止まらず、自分でも訳が分かりませんでした。しばらくそのまま泣いていたと思います。そして、ああもう無理かもしれないと感じ始めました。頭の片隅で、こんなに泣けてしまうくらい、ずっと無理を重ねていたんだ、自分でも気付かなかったけど、ここまで社長のストレスは大きいものだったんだと考えていました。

始業時間も迫っていたので、「体調が悪いので今日は欠勤させてほしい」と電話をしました。電話に出た事務の先輩が、私の仕事を代わってくれることになりました。欠勤は、入社以来これが初めてのことでした。先輩に迷惑をかけてしまった、明日は絶対に行かないと…と考えていると、折り返し社長から電話がかかってきました。

社長は「お前、明日からもう来なくていい」と言いました。頭が真っ白になりました。「どういうことですか?」と聞き返すと、社長は「お前はもううちではいらないから。早く身体治せよ~。それじゃあな」と言って電話は切れました。③に続きます。