ハラスメントって何ですか?知ってるようで知らない基本知識

「ハラスメント」とは「嫌がらせ」「いじめ」という意味です。1980年代に「セクハラ」という言葉がマスコミに登場してからしばらくは、新聞などでも「セクシュアル・ハラスメント(性的嫌がらせ)」というカッコ書きが付けられていたことを覚えている人もいることでしょう。

しかし「嫌がらせ」という言葉は比較的軽い響きがあり、非常に重い被害の実態とはかけ離れた印象を与えかねないので、ここでは「いじめ」という訳語を主に使っていきます。

セクハラという言葉が登場するまでは男性が社会の中心なのが当たり前で、男性にとって居心地の良い職場環境が普通でした。女性は結婚退職するのが一般的で、新卒から数年で辞めて入れ替わっていく会社が多かったのです。

したがって、パートの中年女性をのぞけば、男性と若い女性だけで成り立っている職場が多く、地位も経験もない若い女性社員が立場の強い男性上司からセクハラと言える言動を受けても文句が言えず、不快な感情を抱えつつもどうせ数年で辞めるんだからと我慢してしまい、見過ごされてきた問題だったのです。

しかし時代が徐々に変わり、責任のある立場で長く働きたいと考える女性が増えたことや、いくつかの事件が背景になり、セクハラという概念が知られるようになりました。

その後、セクハラ以外にもいろいろなタイプのハラスメントが世の中に知れ渡るようになりました。パワハラ(権力によるいじめ)やモラハラ(精神的ないじめ)、アカハラ(大学など専門的教育機関でのいじめ)など、詳しくは別のページで説明しますが、どれもそれぞれ深刻な問題です。

どのハラスメントにおいても、被害者と加害者の関係にはもともと上下関係が存在します。よくあるパターンは学校の先生と生徒、部活の顧問と生徒、会社の上司と部下、家庭内では夫と専業主婦などです。立場が上の人が加害者になるケースが圧倒的多数で、その強い立場を利用してハラスメントが行われます。

職場や学校で一緒に長い時間を過ごせば、人間同士ですから嫌な思いをしたりさせたりすることは誰にだってあります。それがすべてハラスメントだなんていうことは、もちろんありません。ハラスメントは一人もしくは少数に対して一方的に継続的に行われるものとされています。

つまり、ミスをして上司に1回だけ叱られたとか、学校でクラス全員が厳しく注意を受けたというような場合は、ハラスメントとは言いにくいです。

ハラスメントの加害者は立場を利用するのが大きな特徴です。セクハラの例では、断ったら成績を下げる、昇進させないなどの不利益をほのめかしたうえでホテルに誘う、パワハラの例では、大勢の前で「お前は何をやってもだめな人間」などと厳しく責める、アカハラの例では、ゼミの中で一人だけ廊下に立たせて授業を受けさせないなど、被害者の方が「NO」の意志を示しにくい形で行われることが多いです。

もうひとつ、ハラスメントの定義として重要なのが、やられた側が不快かどうかという点です。「彼氏いるの?」などという日常会話っぽいことでも、言われた側が「嫌だな」と感じて、何度も繰り返された場合はセクハラと言えます。

逆に、上にあげた例のようにホテルに誘われたとしても、誘われた側がまったく不快にも思わず、何も気にせず断ることができ、実際に成績を下げられるなどの不利益がなければセクハラではありません。

普段の関係性や受け取る側の気持ちがハラスメントの定義に関わってくるということなので、ここが難しいところです。何がハラスメントで何が違うのかなど、引き続きお話していきます。